「死ぬつもりだったの?」

そう言って白くて細い指先が、傷の上をすべる。
軽い痛みを覚えたけれど、それがこころなのか手首の傷なのかは、よくわからなかった。

「これ、いたそうで見てられないよ」
「・・・いたくなんかない」

私が小さく言うと、彼はかなしそうに笑んで、目をふせた。


いつもこうなのだ。
私はどうしてこんなふうにお互いを傷つけることしかできないのかわからないまま。
私が私に傷をつける、ということは、彼のこころにまで傷を負わせる、ということなのに。

それにはしっかりと気付いておきながら、それでも私はこうして、同じことを延々とくり返している。
罪悪感がないわけじゃない、とは思うのだけれど、確かじゃない。
だったらあるのかと訊かれてしまえば、私はきっと首を縦には振れないだろう。


「消毒、しとこうか」
「・・・・・・、うん・・・、」

そうして指先がふたたび傷の上をすべると、途端に泣きたくてたまらなくなる。
いっそ罵倒してくれればいいのに。
けれど、彼はいつも私をつつみ込むのだ。

かなしみに満ちた目と、かなしみに満ちた指先。

ひどい眩暈をおぼえて、私はひっそりと瞼をとじた。





2005.07.01
話にすらなっていない。 というか内容がありません(洒落ではなく)。



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