自  (ぢ  さ  つ  、?)  殺



きみの紡ぐことばはいつだって正しかった。
その頃わたしは反論することを知らなくて、ただ只管耐えるしかなくて。
下唇をぎゅう、と噛み締めて、両方のてのひらをきつく握り締めるばかりだった。
無駄に長くて鋭い爪が食い込んで、血がにじむほどに。

わたしの爪は、わたしを守るために在ったのだ。
今ならばそう思うこともできるが、その頃はやっぱりそうは思えなかった。
正しいのはいつだってきみだったのだから。

きみはことある毎にわたしを暗闇に閉じ込めた。
けれどそれは、確かに正しかった。
悪いのはいつもわたしで、
きみはいつも正義を主張した。

反論なんてする気は、もしかしなくても無かったのだろう。
わたしにとってきみの言葉は絶対だった。
幾ら不条理でも、それでも、絶対だったのだ。

きみは、わたしの髪の毛を引き摺って
首に手を掛けたことを覚えているだろうか。

「折れそうだな」

そう云って、腕に力をこめた瞬間、
きみはいまにも泣きそうな顔をしていたのを知っている?
ひどく間抜けで、ばかばかしくて、
だけど、わたしはとてもかなしかった。


きみは、わたしのことを憎んでいる、と云った。
わたしに対して存在している感情は、怒りと憎しみと、それから、ほんの少しの愛だとも、云ったね。
そのほんの少しの愛を――それがいつやって来るかは全然知らなかったけれど――、わたしはずっと求めていたのだ。
わたしを殺めて手に入るものが愛なら、そうすればいいと思っていたし
何よりそんなふうに歪んでいても、わたしはその愛を求めずにはいられなかった。

優しくなんかしてくれなくたってよかった。
いためつけて満足するならば、それでもよかったのだ。

きみはその愛が、歪んでいることを知っていたんだね。
こころを置き去りにしたままで、
わたしを暗闇に閉じ込めて、必死でなにかを守ろうとしていたんだね。

間抜けなわたしは
それでもその歪んだものを受け止めて、そして抱えたかった。

ただそれだけの、話だ。


きみのことばはいつだって、正しかった。
反論する、ということを知ったいまでも
やっぱりきみのことばは、ただしかったと、わたしは思っているの

だからもう、好きなようにして。




(いっそのことひきさいてください それを愛だというのならわたしはきっと、うけいれるから)





Oct 7th,2005 (Fri)
な ん だ か 、 や ん で い る ね 。






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